● 本との出逢い

8年前、スイスの山をトレッキングした時、参考にさせてもらったホームページの中に「ツール・ド・モンブラン」を歩いた記事があった。そこで初めて、何日間もかけて踏破するロングトレイルがあることを知ったが、でもその時の感想は、何日も山小屋を渡り歩いて、汗をかいた着替えはどうするのか、現地のガイドさんを頼むのは抵抗がある、などで、自分たちにはあまりそぐわない気がしていた。ところが、次のヴァケーションはヨーロッパアルプスかな?と、漠然と考えだしたときにこのロングトレイルを思い出したのである。

いつものようにネットサーフィンしていたとき、清水昭博氏著の「トゥール・デュ・モンブランを歩こう 素敵な山小屋と素晴らしい展望」の本の案内を見つけた。ヨーロッパアルプスのロングトレイル案内、と書いてあった。すぐ購入して中を読んでいくと、私がここを歩くのは無理と断念した懸念事項について実に詳しく答えが書いてあって、ドキドキしながら吸い込まれていった。

一通り読み終えて、もしかしたら自力で行けるかもしれないと思ったのが昨年の9月。それから50000万分の1のハイキングマップを購入して概要をつかんだりしながら、気持ちがだんだんと高まっていくのを覚えた。

とはいっても、紙面でわかることについては限界があるわけで、自分流にアレンジするなんてとんでもないこと、それなら本に紹介してあるコースプラン通りに歩くしかないと考え、泊まる小屋も同じにしたら行けるかもと。ほぼ気持ちが固まったころ、本の巻末に、感想や意見があったら連絡を受けると書いてあったので、本に記載のコースをそっくりまねして歩こうと思ってる、とご挨拶のメールを著者の清水氏に送った。それが昨年の12月20日、そこから準備に取り掛かった。


地図










  



















● 行程プランの作成


1年に一度、1か月のヴァケーション、この行先が決まると、一気に忙しくなる。まず日程を決めて、できるだけ早く飛行機のチケットを購入し、宿を手配する。今回は目的がはっきりしていたので、出発日が決まると意外と早くまとまった。例年なら、植木に少しでもダメージが少ない梅雨時を中心に出かけるようにしているが、でも今回は山の残雪や雨の状況などを考えて、出発時期を遅らせた。

一月の内、前半をTMB、後半をパリ滞在、それもパリはアパートを借りてということにしたので、宿は山小屋とパリの一部屋で良かった。1か月の表を作って、毎日の行動プラン案を作るときに、後半のパリでの過ごし方に世界遺産に登録されている近郊都市への日帰り旅行を組み込んだ。(時間的に大分無理のような気もしたが、何とかなる、といつも背伸びして計画してしまう。)

● 航空券の予約

今回は、パリ往復のフライトに決め、パリからシャモニへ移動して翌日にはすぐ山へスタートするので、フライトでの疲れを極力軽減するため、日本航空の直行便を利用することにした。燃油付加税が廃止になる4月1日まで待って、大分安く買えるかな?と期待したけど、エコノミー2人分ですべて込みで260、440円、安かったのかな?
なんと、成田からパリまで12時間30分、帰りのパリから羽田まで11時間55分しかかからない。これまで格安航空券ばかり使って、経由地での待ち時間を当たり前と思っていた私には、画期的なことであった。飛行機は嫌いという人もいるけどこのじじばば達は大好き。疲れる間もなくパリに着いてしまった。

● 宿の手配

TMBの宿は本に紹介してある所を予約する。TMBの公式サイトからたどって、宿の予約サイトに行き、目的の小屋にアクセスするが、サイトからは予約できない宿、時期が早く、まだ受け付けてないところなどまちまちで、これでは何時確定するかわからないので、本の中で紹介のあったシャモニ観光案内所にメールを送りすべて一括してお願いすることにした。

シャモニ観光案内所の中には日本語案内所があって、日本語が堪能なベルナデッドさんという女性の方が、日本から訪れる人たちのお世話をしてくださっているという。観光案内所には英語でメールを送ったが、数日後の4月26日、ベルナデッドさんからローマ字で返事が来た。

時期が早いのでまだ小屋は予約受付をしてないだろうとの清水さんからのアドバイスがあっていたが、やっと小屋の予約が始まったと最初に書いてあった。しかしその時点で、スタートに決めていた小屋がすでに満室、その小屋だけは清水さんが特にスタートとしておすすめの小屋だったので、日程変更し一日スタートを早めることにした。当初は初めての挑戦でもあるし、一日シャモニで準備時間をとって、観光案内所で情報収集でもしようと思っていたが、それを削らねばならなくなった。

他の小屋も、なかなか返事が来なかったりで、結局すべて決まったのが6月3日。空きがない小屋の変更などもあって、ベルナデッドさんとのローマ字でのメールのやり取りは10回を超えた。3カ所の小屋の変更、デポジットの問題、クレジットカードの担保など、ほんとにいろいろとお世話になった。
TMBを個人で踏破しようとの計画は、多分ベルナデッドさんのようなお手伝いがなかったらスムーズにはいかないだろうと思った。

後半のパリ宿はサイトでいろいろ検討して、airbnb というものを利用することにした。このairbnbは、正式なホテルなどの宿泊施設ではなく、自宅などを宿泊施設として提供するもので、いろんな条件を見ながら自分にマッチするところがあれば提供する人(ホスト)にいろい質問しながら、仲介を通して予約する。自炊しようと思っていたので、キッチンの設備はどうか、買い物には便利か、駅に近いか、洗濯機はあるか、などを基準に選んだ。しかし、結果は全く考えも及ばないところで自分たちには合わない部分がたくさんあった。

● 交通の手配

パリに到着してからの移動手段、交通機関の手配もしっかり固めておかねばならない。計画がきっちりしている部分は早目の予約で鉄道料金もかなりお得に確保できる。

まず、パリから登山基地シャモニーへの移動

  
 
山を下りて、シャモニーからパリへは上記と逆。

後半のパリの滞在15日。ルーヴル美術館を堪能したいというじじの夢を叶えるにしても美術館巡りだけではあまり過ぎる時間。やっぱりパスを購入して近郊都市の世界遺産を巡りたいということになり、フランスレイルパス一等を購入することにした。フランスの高速列車TGVをメインにフランス国鉄15日間乗り放題。放題と名がつくと欲張りすぎる悪い癖が出てしまうばばだが、今回もかなり欲張ることになりそう。

TGVに乗車するには事前の座席予約が必要で、これがまた、早く予約しないとパス枠というもの
があって取れにくいとか書いてある。日本から予約すると手数料がかなり高く、できれば現地に
ついてから予約したかったが、結局すべて事前予約した。

これも予約の仕方があって、同じレイルヨーロッパのサイトからでもそのままだとeチケット購入
ができなくて各予約ごとに手数料と郵送料がかかってしまう。ケチんぼのばばは何とか安くと、
いろいろ調べて、日本からでなく外国から購入していることにして、二人分で12枚の座席予約を
一括して申し込み、eチケット購入ができて郵送料が不要、手数料も一回分で済んだ。

ということで、事前購入・予約した鉄道とバス

[チケット]
・TGVリニア  パリ・ジュネーブ間往復一等 
・easybus   ジュネーブ空港・シャモニーバスセンター往復
        シャルルドゴール空港・パリ市内往復
・フランスレイルパス15日間一等
・ユーロスター パリ・ロンドン間往復二等 

[座席予約] パリから
・ボルドー往復
・モンサンミッシェル往復
・ロワール往復      

考えてみると、鉄道パスはお得なように見えるが、別に座席指定や予約の手数料が要り、よく考
えて購入しないとお得にならないかもしれない。フランス鉄道チケットは早期だと座席指定込み
でびっくりするほど格安で購入できる。今回はレイルパス自体をキャンペーンぎりぎりで安く手
に入れたのでたぶん元は取れたと思うが、検証はしていない。

● 所持品、装備の準備

清水氏の本によると、TMBをすべて歩くには、相応の体力が必要。日本なら、北アルプスを縦走
できれば、技術的にも体力的にも問題はないであろう、と書いてあった。じじは若い頃よく山に
登っていて、北アルプスも経験があるのかな? しかしばばは、北アルプスどころか、九州の久
住山くらいの日帰り登山しか経験がない。したがって、本格的な登山の装備など持ってるはずが
なく、結局すべて一から揃えることになった。13日間の縦走ということで、とにかく軽い物、着
替えが思うようにできないので汗対策等、必死に情報を収集して揃えた。頭のてっぺんから足の
先まで、二人ともほとんど新調したので、装備だけで二人分の航空券より高くなった。中でも、フ
ァイントラックのスキンメッシュとナノタオルは大活躍。登山用としてだけでなく夏場の戸外で
の活動にはとても役に立つものとして推奨したい。

● 海外旅行保険

今回の旅行は最初から不安だらけ。クレジットカードに付帯する保険だけでは、もし怪我でもし
たら全然足りない。傷害死亡、賠償責任はクレジット付帯で充分なので治療費用と救援者を
20.000.000円追加した。これで一人分が9.810円、もしものことを考えたら安い物だと思う。